GoogleやAmazonをはじめとする巨大IT企業がクラウドを提供するようになり、10年以上が経過しました。
現在ではクラウドサービスの利用は十分に普及したといえるでしょう。
クラウドには様々なメリットがあり、多くの企業で採用が進んでいます。
この記事では、自社IT基盤のクラウド化について、その進め方やポイントについて解説します。
IT基盤のクラウド化とは
高まるIT基盤のクラウド化ニーズ
近年では、ITシステムのクラウドへの移行が一般化しています。
銀行などの保守的と思われるような企業も、自社の基幹システムをクラウド環境へ移行するなど、企業におけるクラウド利用ニーズは高まっています。
また、政府自治体の動きに目を向けると、2018年に政府がいわゆるクラウド・バイ・デフォルト方針を策定して以降、政府システムにおいてもクラウドの活用が進んでいます。
近年ではデジタル庁の設立もあり、政府におけるクラウド化の流れは加速しているといえるでしょう。
IT基盤として活用できるクラウドサービス
それでは、どのようなITがクラウドへの移行対象として検討できるのでしょうか。
極論を言えば、自社の大半のITサービスはクラウドへの移行を検討できるといえるでしょう。
まずは自社のITインフラについて検討すると、例えば業務遂行に必要な文章作成・メール・スケジューラ等のOfficeソフトウェアはクラウド化が進み、現在ではOffice365やGoogle Workspace等の利用が一般化しています。
また、財務会計システムや人事システム等の企業運営に必要となるシステムも、多くのパッケージベンダがクラウドでのサービス提供を行っています。
営業管理システムについても、Salesforceに代表されるようにクラウドサービスとしての提供が一般化しています。
最近では、名刺管理のSansanのようにクラウド上での接点情報管理システムの利用も進んでいます。
企業の基幹システムについてもクラウド移行が進んでいます。
SAPやMicrosoftのDynamic365のようなERPパッケージもクラウド基盤上で動作するようになりました。
このような状況を考えると、自社でオンプレミス運用している多くのシステムはクラウドへの移行を検討できる状況であるといえるでしょう。
自社IT基盤をクラウド化するメリット
それでは、自社のIT基盤をクラウド化することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
以下では4点のメリットを取り上げて解説します。
リソースの最適化
クラウド化の最も大きな恩恵は、リソースの最適化です。
一般的にオンプレミスでシステムを運用する際には、サーバは買い切り(もしくはリース)となり、その間のシステム処理量に関わらず保守切れまでの期間は同じハードウェアリソースでシステムを利用する必要があります。
クラウド化により、システム処理量の増減に応じてシステムのリソースを必要な分だけ利用できるようになることが大きなメリットです。
セキュリティレベルの向上
一般的に、クラウドへの移行を行うことでセキュリティレベルは向上します。
クラウドサービスの提供事業者は、データセンターを運営し多数のサーバを管理しているため、一企業で行うセキュリティ対策よりも高度な対策を行うことができます。
ただし、クラウドサービスは提供事業者に多くをゆだねる契約形態であり、提供事業者の力量によっては重大なセキュリティ事故を引き起こすリスクがあります。
クラウドサービス選定においては、事業者の信頼性や実施しているセキュリティ対策を考慮の上、検討を行うとよいでしょう。
任意の場所からの利用
コロナ過に伴うテレワークの浸透に伴い、仕事場所を選ばない働き方が一般化しました。
クラウドサービスのメリットとして、任意の環境からアクセスできるという点があげられるでしょう。
オンプレミスでの運用では、自社ネットワークにVPNを設定したうえで自社システムを利用することが一般的ですが、クラウドサービスではインターネットさえあればどの環境でもアクセスができます。
これにより、VPN基盤にかかるコストの削減にもつながります。
ただし、インターネット通信には盗聴などのセキュリティリスクがあることに注意が必要です。
特に、パスワード保護されていないようないわゆる「野良wifi」などの利用により企業の情報が漏洩するリスクもありますので、利用ルールを定めるなど対応が必要となります。
IT基盤のクラウド化手順
以下では、自社IT基盤のクラウド化における検討手順について解説します。
クラウド化する対象を精査する
まず初めに、自社IT基盤のうちクラウド化を行う対象を精査します。
もっとも検討しやすいのは、サーバの保守切れなどのタイミングでクラウド化を検討することでしょう。
また、システムのバージョンアップが必要になったなど、何らかの変化を契機とすることも検討できます。
比較的クラウド化しやすいシステムとしては、自社の業務のうち定型的な業務です。
顧客管理やスケジュール管理、請求入金管理等のどの企業でも共通するような一般的な業務は、対応するクラウドサービスが豊富に存在するため検討がしやすいです。
また、IT基盤のうち、マイクロソフトのOffice365に代表されるようなオフィスツールについてはクラウド化しやすい対象です。
手始めにクラウド化する対象として検討できるでしょう。
クラウドサービスの選定を行う
クラウド化の範囲を検討したら、導入するクラウドサービスの選定を行います。
上述した通り、クラウドサービスは提供事業者側に自社のデータを含め多くを預けることになるため、信頼できる事業者の選択が最大のポイントとなります。
クラウドサービスを選定する前に、候補となるクラウドサービスと自社業務のFit&Gapを行います。
Fit&Gapとは、自社の要件とシステムの提供機能を比較し、システムがどの程度要件を満たしているか確認する方法です。
クラウドサービスとしてSaaS等を利用する場合、一般的には自社の業務に合わせたカスタマイズを行うことができない場合が多いです。
自社の業務のうち、どうしても変更できない業務プロセスがあり、その業務をクラウドサービスで実施できない場合は、選定するクラウドサービスの見直しも含めて検討を行う必要があります。
システムの移行を行う
導入するクラウドサービスを選定したら、システムの移行を行います。
現行システムが存在する場合は、クラウドサービスへのデータ移行を実施します。
データ移行はリスクが高い作業であるため、業務に与える影響を加味しながら、並行運用などによりデータ移行を回避できないか検討を行うとよいでしょう。
クラウドサービスは、従来型のアプリケーションとは異なりPCへのインストールなどの初期設定作業が不要となりますが、それでもシステム移行時にはトラブルがつきものですので、移行時には態勢を整えてトラブルに対応できるようにするとよいでしょう。
まとめ
この記事では、自社IT基盤のクラウド化について解説を行いました。
現代のITにおいては、クラウドサービスの利用を第一に考える、いわゆるクラウドファーストの考え方でITシステムを導入するとよいでしょう。
既存のITの更改タイミングに合わせて、徐々に自社のIT基盤のクラウド化を進めることをおすすめします。