国内では、コロナ過での事業環境の変化や労働人口の減少による人手不足を背景に、多くの企業でDXの取り組みが進んでいます。しかしながら、DXの推進方法に頭を悩ませている経営者や担当者の方は多いのではないでしょうか。
近年、DX推進に役立つツールとしてMicrosoftのPower Automateに注目が集まっています。この記事では、Power Automateにスポットを当てて、その概要やDXへの活用のためにできることを紹介します。
PowerAutomateとは
Power Automateの概要
Power Automateは、Microsoftが提供する自動化ツールです。Power Automateは、過去にMicrosoftが提供していたMicrosoft FlowというWeb上での処理を自動化するツールをベースに、デスクトップ上で動作するRPA機能や高度なAI機能を追加した製品です。
Power Automateの特徴として、Microsoft社の製品でありOffice製品との連携性に優れているという点が挙げられます。WordやExcel等と連携したドキュメントの自動生成や、Outlookを利用したメールの送受信や予定作成の自動化などを簡単な操作で実現できます。もちろんOffice製品以外にも対応可能で、SAPなどのERP製品やTwitter、Facebook等のSNSサービスとの連携も可能です。
Power Automateが注目されている理由
それでは、なぜPower Automateに注目が集まっているのでしょうか。もっとも大きな理由は、Microsoftが2021年3月に「すべてのWindows10ユーザにDesktop版を無償開放する」ことを発表したことによると言えるでしょう。これにより、ライセンスを必要とせず自動化ツールが手軽に利用できるようになりました。Excelのマクロのように、今後Power Automateの利用が一般化していくと予想できます。
Power Automateでできること
比較的導入しやすいDXの手法として、業務自動化が注目されています。それでは、Power Automateではどのような自動化が可能なのでしょうか。以下では、Power Automateで実現できる自動化について紹介します。
クラウドサービスで実施する処理の自動化
最近では、業務の多くはクラウドサービスで実施されています。Power Automateでは、クラウド上で動作する様々なシステムをコネクタという仕組みで連携させ、処理を自動化できます。
下表にて、自動化できる処理の例を示します。
タイトル | 概要 | 活用例 |
ワークフローの自動化 | Sharepoint上に情報が登録されたら、上長に自動で承認依頼メールが送られ、承認処理を実施する | ・休暇申請の自動化
・旅費交通費精算 |
書類発行・ERP登録の自動化 | Sharepoint上に情報が登録されたら、責任者に承認メールを送付し、承認されたらERP(SAP等)にデータを取り込み、書類発行処理などを行う | ・請求書発行と債権計上の自動化 |
SNS上での評判を自動取得 | 定期的にTwitter等のSNSサービスから特定のキーワードが含まれる投稿を収集し、Power AutomateのAI感情分析で評判を確認する | ・自社製品の評判確認
・いわゆる炎上の早期検知 |
デスクトップで実施する処理の自動化
また、Power Automateを用いるとデスクトップ上で行う入力処理や確認処理などを自動化できます。定期的に実施しなければならない作業や、同一手順で繰り返し実行する必要がある作業などは、自動化することで業務効率化を実現できます。また、Power Automateに備わっているテンプレート機能により、一般的な業務であれば新たにフローを作成せずとも登録済みのテンプレートを利用できます。
下表にて、自動化できる処理の例を示します。
例 | 概要 | 活用例 |
メールの添付ファイルの自動保存 | Outlookにて受信したメールに含まれる添付ファイルを、すべてOneDrive上に自動保存する | ・参加申込書や請求書等の自動保存 |
Webサイトの自動チェック | 定期的にブラウザからWebサイトにアクセスして更新情報を確認し、更新があればメール等で通知する | ・取引先のニュースリリースの自動取得
・官公庁の調達情報の自動取得 |
Word→Excelの自動生成 | 複数のWordに含まれる情報をExcelに自動で集約する | ・申込書の内容を自動でExcel化 |
AIを活用した業務の高度化
Power Automateでは、Azure AIを活用したAI Builderと呼ばれるAI機能により、高度な業務処理を実現できます。
下表にて、自動化におけるAIの活用例を示します。
タイトル | 概要 | 活用例 |
OCRによる文字読み取り | 画像やPDF形式のドキュメントに含まれる文字情報を読み取り、Excel等に整理する | ・紙媒体の申請書等の自動読み取りと集計 |
音声のドキュメント化 | 音声ファイルに含まれる情報を自動で文字に起こし、ドキュメント化する | ・会議録の自動生成 |
与信の自動化 | 条件を設定することで、企業の与信チェックを自動化する | ・取引先の与信確認と取引の継続判断 |
業務プロセスの可視化と改善
また、Power Automateに含まれるProcess Advisorという仕組みを用いると、業務プロセスを可視化し、改善策を検討することができます。
Process Advisorを利用するためには、まずPower Automate上で業務プロセスを登録します。プロセスは手動で一つずつ登録することもできますし、Power Automate DesktopレコーダーにてPC上の操作を自動で記録することもできます。
プロセスの登録が完了したら、Process Advisorにてプロセスの分析と可視化を実施します。プロセスの分析と可視化により、業務フローが自動生成され、各作業にかかる時間や例外処理などを確認することができます。可視化されたプロセスを見て、作業の手戻りやボトルネックなど、課題がないかを確認します。課題があれば、業務の改善に役立てることができます。
このような取り組みを、プロセスマイニングとも言います。Power Automateを用いることで、比較的簡単にプロセスマイニングに取り組むことができます。
Power Automateの価格
最後に、Power Automateの価格について紹介します。Power Automateには様々なライセンス形態があり、現在保有しているMicrosoft社の他のライセンスや、利用する機能により価格が異なります。
まず、Power AutomateのDesktop版は全Windows10ユーザが無償利用可能です。ただし、Desktop版では自動処理の開始指示は人が行う必要があることや、コネクタの利用不可などの制約があります。また、同様に機能制限はありますがOffice365ユーザであればPower Automate for Office365を無償利用可能です。
また、すべての機能を利用する場合は、ユーザ当たり1,630円/月から利用可能です。また、組織全体で利用できるライセンスプランでは、54,555円/月で5フローまで作成が可能です。ただし、Power Automateは新しいサービスであることから、価格は都度変更される可能性があります。最新の情報はMicrosoftのWebサイトを確認下さい。
まとめ
この記事では、DXに活用できる自動化ツールとしてMicrosoft社のPower Automateの紹介を行いました。Power Automateはその導入の手軽さやOffice製品との連携性の良さから、企業における自動化ツールとして優れています。DX推進に悩まれている方は、まずはPower Automateを用いた業務の自動化から検討を始めてみてはいかがでしょうか。