近年では第三次AIブームの到来により、AIのビジネスへの適用も拡大しつつあります。
AIというと曖昧な言葉のように感じられるかもしれませんが、AIはれっきとした技術の一分野であり、明確に「できること」と「できないこと」が存在します。
この記事では、AIの技術動向について紹介したうえで、AIのビジネスへの応用可能性について解説したいと思います。
AIとは
AIのことを得体の知らない何かと感じる方もいるかもしれません。
しかしながら、AIは単なる科学技術の一分野にすぎません。
以下では、AIを構成する技術要素について解説します。
AI技術の構成要素
現代のAIと呼ばれる技術は、基本的には機械学習をベースとするものです。
機械学習は統計分野に関連する技術であり、あるタスクを行う上で、過去のデータを利用することで性能を向上させる技術が機械学習です。
具体例で説明しましょう。
例えば、過去の数学のテストで70点、75点、80点を取った学生がいるとします。
この学生は次の数学のテストで何点くらいをとると予想できるでしょうか。
おそらく85点くらいを予想する方が多いはずです。
過去のデータからはこの学生は徐々に学力を伸ばしていることが読み取れますね。
これが、機械学習の一つである、回帰問題の例です。
また、商品の仕分け作業において、赤はAの箱に、青はBの箱に入れるとします。
順々に処理をする中で、赤みがかった紫と、青みがかった紫の商品がやってきました。
おそらく、前者はAに、後者はBに入れるでしょう。
このように、曖昧なものも含めて何らかの分類基準を定義するのが、機械学習の一つである分類問題です。
これらの例のように、統計的な観点で傾向を見出したり、分類を行ったりする機械学習技術をベースとしてAIは実現されています。
AIが注目されている背景
近年、AIに注目が集まっていますが、これはどのような背景によるものなのでしょうか。
最も大きい要因は、近年AIの性能が爆発的に向上した点にあります。
AIの技術向上についての象徴的な出来事として、2012年に行われた画像認識コンペティションである「ILSVRC」がよくあげられます。
このコンペティションで登場した「Super Vision」は圧倒的な精度で勝利し、人工知能分野の研究者に激震を与えました。
この「Super Vision」で初めて利用された技術が、ディープラーニングです。
ディープラーニングは既存の機械学習手法であるニューラルネットを改善したもので、圧倒的な性能を誇ります。
そして2015年、ついにディープラーニングによる画像認識は、人の目による判断を超える精度を獲得するまでに至りました。
このようにAI技術が発展したことを背景に、AIのビジネスへの適用範囲についても大きく広がりました。
また、経済産業省をはじめとした政府の後押しもあり、ビジネスでのAI活用が注目されるようになったのです。
分野ごとのAI技術成熟度
以下では、分野ごとにAI技術がどの程度成熟しているかについて解説します。
画像認識
ビジネスへのAI技術の適用可能性が最も高いのは画像認識分野でしょう。
上述の通り、すでにAIによる画像認識精度は人間を超えており、現在人が目で見て判断している業務についてはすべてAIに置き換えられる可能性があります。
現実的には、AIを利用するためには学習のためのデータが必要であり、また対象をカメラで撮影する必要もあることから、すべての業務をAIに置き換えることは難しいですが、それでも製造業や食品業における検査業務や、物流・倉庫における検品など、AIの適用範囲は広く存在します。
音声認識
音声認識もまた、AIの活用可能性が高い分野です。
2019年にMicrosoftが作成したAIは、すでに人間の聞き取り性能を超える結果を示しています。
ただし、音声を人間並みに聞き取ることができても、後述するように言語理解のAI性能はまだ不十分であることに注意が必要です。
よって、対人コミュニケーションにおいてAIが人間レベルの性能を発揮することは現時点では不可能です。
音声認識のみで実現される業務は限られるため、上述した画像認識よりはAIの応用分野は限られるといえるでしょう。
言語解析
言語解析においては、AIはまだ人間レベルの性能を持つに至っていません。
例えば翻訳や文章解釈などの定型的な処理内容であれば、AIは十分に実用的な性能を誇っており、多数の実用化例があります。
一方で、窓口業務のように相手の曖昧な言葉を解釈し、適切な返答をこなせるかというと、難しいのが現状です。
言語解析については、現時点では特定の範囲に限定したうえであれば実現できるという理解でよいでしょう。
数値予測
数値予測はAIの得意とするところです。
当然、人間より圧倒的に優れた能力で予測をすることができますが、数値予測における難しい点はそもそもの問題設定にあります。
AIはインプットをもとにして答えを出すため、どのようなインプットを与えるかによって結果が変わります。
ディープラーニングにより有効なインプットの取捨選択もAIが実施するようになりましたが、それでもAIに与えていないデータは当然ながらAIは利用できないため、人間の感や経験といった可視化しにくいものをAIに入力しづらいというのが難点です。
反対に言えば、適切にインプットを与えることができれば、数値予測できる範囲は多く存在するといってよいでしょう。
AIのビジネスへの応用例
以下では、AIのビジネスへの応用例について解説します。
医療への画像認識の適用
第三次AIブームの初期に注目されたのが、医療への画像認識の適用です。
特に、MRIやCTのように画像から診断を行うような場合に、病気の有無をAIにより判断させることが有効です。
IBMのワトソンが行ったAIによるがん診断は、医師による判断と同等レベルでの診断が可能であることを示し、注目を集めました。
AIスピーカーによる顧客接点獲得
近年では、AIスピーカーが家庭にも普及しつつあります。
AIスピーカーの技術には、音声認識と言語解析技術が利用されています。
AIスピーカーの音声認識技術は抜群で、癖がない話し方であればほぼ100%話した言葉を認識できます。
AIスピーカーは、新たな顧客接点として注目されています。
日本ではあまり普及が進んでいませんが、アメリカではAmazonをはじめとするAIスピーカーが普及しており、商品の注文などがAIスピーカーを通して実施されています。
問い合わせ対応チャットボット
問い合わせ対応チャットボットについては、日本でも普及が広がっています。
上述の通りAIの言語解析能力は発展途上であるため、チャットボットは人間がフランクに質問した内容に対して完璧に答えることは難しいです。
しかしながら、定型的な質問であれば十分に実用レベルで答えられるため、コールセンターの負荷軽減やWeb上での商品購入における離脱防止などで活用が進んでいます。
需要予測
需要予測はAIの得意とするところです。
特にサプライチェーンの管理や生産量の調整などで、要素変動により最適解が異なるようなケースでは、AIによる需要予測が有効です。
需要予測において担当者の知見に頼っていたようなケースでは、担当者の退職などにより知見が失われてしまうリスクがありました。
AIであれば、担当者の力量に依存することなく予測を行うことができます。
まとめ
この記事では、AI技術の発展状況を踏まえて、ビジネスへのAiの応用例について解説しました。
ポイントは、aiは単に一分野の技術であり、できることとできないことが明確に分かれていること。
そして、aiとひとまとまりに考えるのではなく、様々な分野ごとに技術の達成状況が異なることです。
これらの技術動向を踏まえて、自社のビジネスにおいてaiが活用できる分野について検討してみることをおすすめします。