最近DXという言葉がバズワードになっています。
DXに乗り遅れると、今後生き残れないと言われる経営者の方も最近多いと感じています。
それでは、なぜ今DXを最優先で散り組まなければならないか、以下に述べたいと思います。
結論を先に述べます。
「デジタル技術の急速な進化により、異次元のゲームを仕掛けてくる競合の出現、そして既に主戦場となっているデジタルネイティブ世代と言われる世代が消費者として主役に躍り出て、彼らを中心とした消費者の行動変容によってビジネスのやり方が大きく変わってきているから」
実際、上場企業など大企業のお客様からは以前よりお問い合わせも多く、また既にPoCなどの取り組みもされている企業も多いものと理解しております。
更には、ここ最近は、中堅企業から中小企業に至るまで、DXに対する取り組みを早く開始していかなければという危機感を話されるお客様が多いと感じております。
これは経済産業省が2018年に公表した『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』を契機に、国内ではDX推進の機運が高まっていることがきっかけとなったことも否めませんが、
AIやIoTといった最新のテクノロジーの活用により、突然異業種や海外から出現する競合の存在、更には今後顧客として主役となるデジタルネイティブ世代の出現により、企業にとって、DX推進こそが21世紀に生き残っていくための必要条件となりつつあることを実感されているからだと思います。
なぜ今DXに取り組まなければならないのか?
具体的に、説明していきたいと思います。
DXとは
DX(Digital Transformation / デジタルトランスフォーメーション)とは、進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念のことです。
ここでは、小難しい硬い定義は省いて、誰にでもわかる事例をもとに、DXを説明したいと思います。
私がDXを説明するときによく使うわかりやすい事例がAmazonです。
アマゾンは、当初は本を中心にECにより販売していました。ご承知のようにもともとは本屋ではなく、IT+物流企業です。
日本に「餅は餅屋に」という格言がありますが、Amazonはもともと本屋ではなく、ITにより従来からの本屋のビジエンスモデルを抜本的に変革しました。つまり本屋というジャンルのビジネスモデルの根底からゲームチェンジを行ったのです。
それにより、我々は本を本屋に行って購入するという当たり前の行動が非常に少なくなり、Amazonを始めとしたECサイトなどで購入するように大きく変わったのは周知のことです。
つまり進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させることができたのです。
日本におけるDXの定義
経済産業省から、産業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進施策について以下が示されました。
- あらゆる産業において、新たなデジタル技術を使ってこれまでにないビジネス・モデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起ころうとしている。こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められていること
- しかし、ほとんどの日本企業は欧米先進企業に比べ大きく出遅れており、大企業を中心にPoC(Proof of Concept:概念実証。戦略仮説・コンセプトの検証工程)を繰り返す等、ある程度の投資は行われるものの実際のビジネス変革には繋がっていないというのが多くの企業の現状であること
- 今後DXを本格的に展開していく上では、DXによりビジネスモデルを変えていくような抜本的な経営戦略の変更も必要であるが、それ以前にこれまでの既存システムが老朽化・複雑化・ブラックボックス化する中では、新しいデジタル技術を導入したとしても、データの利活用・連携が限定的であるため、その効果も限定的となってしまうといった問題があること。
- また、既存システムの維持、保守に資金や人材を割かれ、新たなデジタル技術を活用したIT投資にリソースを振り向けることができないといった問題もあること。さらにこれを放置した場合、今後、ますます維持・保守コストが高騰する(技術的負債の増大)とともに、・既存システムを維持・保守できる人材が枯渇し、セキュリティ上のリスクも高まることも懸念されること。
※経済産業省 産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進 「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」より
つまり、AIやIoTといった新たなデジタル技術を使ってこれまでにないビジネス・モデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起ころうとしている。
こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、
①デジタル技術を利用したビジネスモデル自体の変革を行わなければならないが、
②日本特有の問題点として、これまで再構築が後回しになっていた既存システムの老朽化、複雑化、ブラックボックス化を早急に解消しないと(経済産業省は2025年の壁と名付けている。2025年までこれらの課題を克服できない場合)
DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があるとしているとしている。
DXの必要性
日本におけるDXの定義及び課題については、経済産業省の課題認識をもとに、先に述べました。
ここでは、DXの必要性についてもう少し掘り下げて述べたいと思います。
ビジネスモデルの変革への意欲
重要なことは、単にタブレットスやスマホを導入することでもありませんし、IT化を推進することだけでもありません。
経済産業省の言葉を借りれば、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
つまり、データとデジタル技術を活用して、顧客ニーズにあった製品やサービスを提供できるためのビジネスモデルを変革して、業務のみならず企業風土まで変革し、競合に打ち勝ち、儲けられるようにしてくださいねということです。
重要なのは、劇的に市場環境が変わってますよ、そのためにはデータやデジタル技術を活用したビジネスモデルを作り上げていかないと負けちゃいますよということです。
事業環境変化への対応
Customer(顧客)
-
メイン顧客層の変化:デジタルネイティブ世代が主役に
-
顧客の購買や行動の変容、つまりデジタル・ネイティブな世代(ミレニアル世代※1やZ世代※2)が市場を牽引する中心となりつつあります。
-
特徴として、この世代は生まれたときからインターネット環境に囲まれ、スマホに触れ、慣れ親しんできた世代であり、デジタルとリアルの世界との垣根が希薄で、常にデジタルをベースに思考する傾向が強く、購買行動もその特徴が現れます。
-
例えば小売業におけるDXの事例をあげると、デジタルネイティブな顧客に対する付加価値としては、デジタルとリアルを問わない利便性を顧客に提供することが重要となります。
つまり、デジタルネイティブ世代の顧客は、リアル店舗とECとの区別が薄く、ECにある商品は、当然リアル店舗にもあるものだと考える傾向が強いと言われています。
残念ながら、日本のスーパーは店舗とEC事業部との垣根やシステムがばらばらで、このようなことが実現していない場合が多いです。 -
つまり、顧客の主役が生まれた時からスマホやSNSに慣れ親しみ、行動がスマホやSNSを起点としているデジタルネイティブな世代に変わってきている。この世代に向けた付加価値のあるサービスや商品を提供する必要があるということです。
-
-
顧客である消費者の消費活動の変化:シェアリングエコノミーの台頭
-
消費者の関心が、「モノ」から「コト」、そして「所有」から「共有」へと変化しています。
-
「インターネット上のプラットフォームを介して個人間でシェア(賃借や売買や提供)をしていく新しい経済の動き」(一般社団法人シェアリングエコノミー協会の公式サイトより)、つまりシェアリングエコノミーが、既存ビジネスモデルを破壊し、新しいビジネスを創出しています。
-
メルカリを筆頭に、カーシェア、駐車場シェア、スーツなど服のシェアなど、またモノだけでなく、クラウドソーシングに代表される個人のスキルや時間といった無形資産までシェアする対象は広がっています。
-
単に「モノ」を売るのではなく、「コト」を提供することにシフトするためには、当然、企業としてのビジネスモデルを変える必要があり、情報システムの見直しも必要となります。
-
まさに、インターネット上のプラットフォームを基盤に、新しいビジネスを創出し、「モノからコト、所有から共有へ」といった消費者行動の変化に呼応するかのような新しいビジネスモデルが既に定着しています。
-
Competitor(競合)
-
先に記載(Consumer)した小売業やシェアリングエコノミー等の事例を成り立たせる基盤として、第3のプラットフォーム※3(①クラウド②モビリティ③ビッグデータ/アナリティクス④ソーシャル技術)と呼ばれるデジタル技術の発展があります。
-
これら先進的な競合は、この第3のプラットフォームを十二分に活用し、旧来の餅は餅屋のビジネスモデルを破壊して新規参入し、競争に打ち勝っているのです。
※3 第3のプラットフォームとは、「モバイル」「ビッグデータ」「クラウド」「ソーシャル」の4つの要素で構成される新しいテクノロジープラットフォームのことで、米調査会社のIDCが2013年頃から提唱しているコンセプトです。ちなみに第1のプラットフォームは「メインフレーム(大規模コンピュータ)と端末」、第2のプラットフォームは「クライアント・サーバー」と定義されています。
競合はこれら第3のプラットフォームをビジネスモデルの中心に据え、積極的に活用することにより、DXによる競争優位性を築いています。具体的には
- モビリティ(及びIoT)
- スマートフォンやウェアラブルデバイスの普及そしてM2M(Machine to Machine)の発展により、「いつでも、どこでも、誰でも、何でも」ネットワークに繋ぐことのできるIoT(Internet of Things)の活用
- クラウド
- それら膨大なビッグデータを保管・管理するクラウドコンピューティング(クラウドサービスプラットフォームからインターネット経由でコンピューティング、データベース、ストレージ、アプリケーションをはじめとした、さまざまな IT リソースをオンデマンドで利用することができるサービスの総称)の活用
- ビッグデータ/アナリティクス
- そしてそのビッグデータを活用してビジネスの変革を起こすためのAI技術の活用
- ソーシャル技術
- SNSを生活の一部として利用する数十億人のユーザーを抱えるSNSプラットフォームをビジネスに積極的に活用
Company(自社)
- 顧客が変わり、今までの業界のやり方根本からゲームチェンジしてくるような強烈な競合が続々参入してきます。
- 自社として、生き残りをかける、または逆に成長戦略を描いていくためには、そもそも自社及び同業界におけるビジネスモデルの変革をどう仕掛けていくか?取り組んでいくか、必死にDXを軸に据えたビジネスモデルを考えなければいけません。
- しかし、それを実現するには様々な課題が立ちはだかります。例えば
-
日本企業の既存システムの多くはオンプレミス型のシステムです。老朽化とともに拡張性や柔軟性に乏しいシステムが多く、DX推進のためのシステム基盤としては大きなハンディとなっています。一方現在世の中には、クラウドやIoTなどのデジタル技術を活用して、柔軟性・拡張性のあるシステムを安価に構築できる環境にあります。早急に対応しなければなりません。→既存システムの刷新
-
すでに様々な分野でデジタル化による変革は起きており、それに対抗するための有効な手段がDXだとわかっています。
しかし、具体的にDXを実現するためには、①どのようなビジネスモデルを目指すべきか?②それを実現するためにはどのような技術を利用し、どのように活用していくべきか?③そのビジネスモデルを変革していくために、どのような組織、業務、マネジメント、そして企業文化を醸成すべきか?→ビジネスモデルの変革と実現
-
- つまりDX成功には様々な高いハードルがあります。今なぜDXなのか?第1回の今回は、DXの定義とその必要性について記載してきました。
まとめ
デジタル技術の急速な進化により、餅は餅屋的な商売の仕方は通用しなくなりました。
まったく異質なゲームチェンジをしかけてくる競合の存在、そしてデジタルネイティブ世代と言われる顧客行動の変容、更にはDX実現を行うために自社として考えていかなければならないことなどを述べてきました。