モノを売りにくい時代、流通・小売業界で生き残るためには
日常生活のさまざまな場面で「デジタル化」が進んでいる現在、オンラインショッピングやキャッシュレス決済の普及によって、特に消費者の購買行動は急速に変化しています。
また、2020年ごろからの新型コロナウイルス感染症の影響を受けて「非接触」の意識が高まり、実店舗での買い物回数が減少しています。今後、この購買スタイルは定着する可能性が高いでしょう。
そういった環境下で、消費行動の変化に大きく影響されているのが、流通・小売業界です。
消費行動や心理の変化を理解した上で、迅速な対応が求められていますが、さまざまな課題に直面しているのが現状です。
流通・小売り業界の課題
働き方改革の必要性
たとえば、「慢性的な人手不足」の問題。「長時間労働」「休日の少なさ」「非正規雇用労働者の多さ」という業界特有の事情もありますが、特に実店舗を運営する小売業者は生産性の向上、業務の効率化などによる「働き方改革」を推進する必要があります。
店舗スタッフの負荷増大
多岐にわたる業務による「店舗スタッフの負荷増大」も深刻です。さらに店舗管理者は、複雑な勤怠管理に加えて、経営の効率化、売り上げ向上のために最適な商品管理・在庫管理などが求められています。
コロナ禍の影響
コロナ禍においては、感染防止の観点から日常生活における「接触」が抑制され、店舗運営では非対面による接客サービスの実現に悩むケースも見られています。
流通・小売業界における課題解決の方向性
こうした流通・小売業界が抱える実店舗運営の課題を解決する有効な手段とは、一体何でしょうか?
そのカギを握るのが、ICT技術を活用した「業務のデジタル化」です。
近年は「デジタルトランスフォーメーション(DX)」と呼ばれ、あらゆる分野で取り組まれています。実店舗のDXとして、具体的例を紹介していきます。
OMO(オンラインとオフラインの融合)
多様化する消費者のニーズに対応するオンライン(インターネットサービス)とオフライン(実際の店舗)を融合するサービスのことです。
多様なデータ活用による業務変革
支払時のPOSデータ、顧客属性や店内での行動履歴、ECサイトやWebサイトでの行動履歴・購買実績などさまざまなデータを統合管理してAIによる分析を実施し、新しい気づきを得ることを可能にします。
店舗運営の省人化・コスト削減
画像認識やバーコードスキャンを活用したセルフレジや、クレジットや電子マネー、スマホアプリ、QR・二次元バーコードなどによるキャッシュレス決済を導入し、店舗内の業務を効率化とともに店舗運営に必要な人員を減らすことを目的とします。
単純作業の自動化
FAXで届いた注文書の内容や業務データ転記などの単純作業をRPA(ロボットによる業務自動化)ツールで自動化することにより、業務効率化を図ります。
需要予測/在庫管理の効率化
販売状況や商品の在庫情報などを基にAIが将来の需要を予測し、RPAで適切なタイミングで自動発注する仕組みを構築することにより、機会損失の低減や無駄な在庫等ロスを最小化します。
従業員の勤怠管理の効率化
さまざまな雇用形態や複雑なシフト体制で勤務する従業員全員の勤怠情報の入力・集計作業を一元管理できるシステムを導入することにより、勤怠管理業務の効率化を図ります。
流通・小売業界におけるIoT活用方法
ここまで流通・小売業界におけるデジタル化の例を紹介してきました。
それらを実現する仕組みには、クラウドやIoT(Internet of Things:モノのインターネット)などの技術が活用されています。
クラウドについては、多くの方がご存じだと思います。サーバーやネットワークなどのインフラ、または各機能を提供するソフトウェアを持たなくても、必要な時に必要な分だけ利用できるサービスとして、あらゆる業界・業種で活用されています。
小売店舗のデジタル化において、クラウドとともに重要な鍵を握るのが「IoT」です。
IoTとは、さまざまなセンサー機能を備えた機器(モノ)が取得した情報をインターネット経由で通信することを意味します。
IoTの活用で、離れた場所にあるモノを遠隔からでも監視・操作・制御が可能になるのです。
取得された膨大な量のビッグデータはクラウド基盤に送信され、AIを活用した管理・分析、処理などから新しい価値を生み出しています。
IoT化の潮流は今後さらに拡大し、私たちの日常生活や社会全体に多くの豊かさをもたらすことが期待されています。
小売業の店舗運営における主なIoT活用事例
店舗のIoT化
商品棚や照明・空調などの設備にカメラや質量センサー、温度センサーなどのIoT機器を設置し、在庫量や温度をリアルタイムで遠隔管理したり、制御を自動化して来店者に常に最適な環境を提供することを可能にします。
来店者・購買者のデータ収集、活用
顔認識システム搭載のカメラやスマートフォンを連携し、来店者の属性や行動パターンの収集や自動識別システムを構築することにより、
値札や広告につけた無線タグとディスプレイを連携させて表示内容を変更したり、来店者の傾向を判別してリアルタイムなアクションを取ることを可能にします。
購買者の顧客体験(UX)の向上
スマホのカメラでバーコードを読み取って料金を計算したり、アプリで支払いが完結するなどスムーズな決済を実現し、待ち時間ゼロの実現など、顧客の利便性を向上させるとともに、「コト消費」「トキ消費」に代表される購買者の顧客体験(UX)の向上が求められるようになりました。
特に消費者がモノを購入するときに、商品の所有に価値の重きを置くモノ消費から、所有では得られない体験や経験に重きを置くコト消費に、更には近年ではイベントなどその瞬間、その場所、人しか味あうことができない価値であるトキの共有、つまりトキ消費に消費者のニーズは変化しています。
在庫管理と発注業務の効率化
電子タグで賞味期限などの情報を一元管理し、常に商品の情報がリアルタイムで把握することにより、これまで経験や勘などに頼っていた発注業務や、品出しや棚卸しなどの作業を遠隔管理・操作、自動化することが可能になります。
このように、IoT活用によって店舗運営における課題解決や業務改善の効果が期待できます。
IoT活用上の注意点
しかし、IoT活用のメリットだけではなく、そのデメリットにも注意しなければなりません。
最も注意すべき点が「セキュリティ」です。
IoTの最大の弱点「セキュリティ」、サイバー攻撃に狙われやすい理由
IoT機器は、低価格で大量設置されるセンサー機器から医療現場で使われる高価な設備にいたるまで幅広い種類があり、その数も加速度的に増加しています。
そうした膨大なIoT機器の適切な管理が課題となっています。
IoT機器の製品ライフサイクルは長いため、搭載ソフトウェアの不具合や脆弱性に対して、提供側のサポート期間を過ぎても利用されることが予想されます。
さらに、機能に特化したIoT機器の多くがセキュリティ対策を後付けで実施することが難しいのです。
そのため、脆弱性を狙ったサイバー攻撃によって多くの事件や被害が発生しています。
IoT機器の脆弱性を狙ったサイバー攻撃の一例として「Mirai」というマルウェアが挙げられます。
これは、IoT機器のソフトウェアの脆弱性を利用して、攻撃者が感染機器を遠隔操作可能な状態にするものです。
感染機器を踏み台にした大規模なDDoS攻撃(分散DoS攻撃)が世界各地で被害をもたらしました。
最低限考慮すべきIoTセキュリティ対策とは?
小売実店舗では、IoTを活用したデジタル化こそが生き残るための重要な戦略になります。
ただ、その実装に当たってはサイバー攻撃などのリスク対策も意識しなければなりません。
どうすれば、IoTを安全に活用できるのでしょうか。
最低限考慮すべきIoTセキュリティ対策としては、以下の4点が挙げられます。
- 常に最新のセキュリティ対策を実施しているクラウドサービスを利用する
- IoTデバイスやソフトウェアのセキュリティアップデートを怠らない
- IoTゲートウェイなどを経由して、インターネット接続の安全性を確保する
- ゼロデイ攻撃(未知の脅威)への対策を検討する
IoTシステムを安全に稼働させるためには、セキュリティ対策の管理コストの削減や信頼性の向上が期待できるクラウド基盤の活用がお勧めです。
しかし、小売業者がシステム基盤の導入やアプリ開発をする場合、開発技術者の確保や導入コストなどさまざまな課題が立ちはだかることが多いと考えられます。
流通・小売業におけるDX先進ソリューション
IoT、AIといった先端技術を利用することにより、流通・小売業界を変革するソリューションが次々と生まれています。
今までご紹介した流通小売業の様々な課題を解決し、セキュリティを含めた弱点克服をも狙ったDXソリューションとして、「スマートストア」と呼ばれる次世代店舗の形が各社から提案されています。
次世代店舗の姿として、最も注目され、実際に次々と導入がはじまりつつある「Smart Store(スマートストア)」については、別途詳しくご紹介していきたいと思っております。
サイトカード(内部記事リンク)↓
IoT、AIといった先端技術を利用することにより、流通・小売業界を変革するソリューションが次々と生まれています。 ここでは、次世代店舗の姿として、最も注目され、実際に次々と導入がはじまりつつある「Smart Store(スマートストア[…]
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まとめ
オンラインショッピングやキャッシュレス決済の普及によって、消費者の購買行動は急速に変化しているのに加え、2020年ごろからの新型コロナウイルス感染症の影響により、流通小売業に大きな影響を与えていることを述べ、人手不足や働き方改革の必要性などによる現状の課題から、IoTやAIなど先端技術を活用したDXが必然であることを述べました。
DX化のメリットして、
流通・小売業のDX化により、データ活用による業務改革、省人化・コスト削減、需要予測及び在庫の適正化などによる様々な経営における恩恵が期待できること
現状の課題としてセキュリティやコスト面について説明しました。
しかし、現状多くの日本企業が既に流通・小売業版DXともいえる「スマートストア」を続々と出店しています。
次世代店舗への対応は待ったなしです。
是非この記事をきっかけに検討してみては、いかがでしょうか?